(130) 横浜・旧外国人居留地に見る 興味深い外来樹 横浜開港(1859年)に伴い、横浜外国人居留地(1859~1899年、実質的には1923年ころまで)が設けられました。居留地は港に隣接した山下居留地と近くの山の上の山手居留地がありましたが、山手居留地の多くは港の見える丘公園、外人墓地、山手公園などとして保存され、今日でも当時の面影が色濃く残っています。そこには日本でもいち早く導入された外来樹を見ることができるとともに、日本に昔からある自生種樹木も大切に育てられ、まさに樹木パラダイスとなっています。 |
(130-1) 謎多いアメリカデイゴの大木 フェリス女学院中・高校の敷地の一角にアメリカデイゴの大木があります。道路のすぐわきに立っていますから花の時期には大変目立ちますが、この地域では見たことが無いようなデイゴの大木です。アメリカデイゴは南米原産の樹木ですが、異国情緒豊かな真っ赤な花を咲かせた姿は、一度見たら忘れられません。外国人居留地のだれかが、この花の魅力にひかれ、いつかこの地にこのアメリカデイゴを植えたのでしょう。 |
このデイゴは横浜地域ではまれに見る大木であり、横浜市名木古木に指定されていますが、そのリストには推定樹齢200年となっています。この地が外国人居留地になってからまだ160年しか経っていませんから、このデイゴが樹齢200年ということには大きな謎が残ります。これについては (a)この地が外国人居留地になる以前の、約200年前(江戸末期)にこの地にアメリカデイゴが植えられた。 (b)この地が外国人居留地になった約160年前ころ、当時樹齢50年くらいのアメリカデイゴがこの地に移植された。 の2案が考えられますが、私は(b)案を支持します。 |
(130-2) 日本におけるヒマラヤスギの聖地 山手居留地一帯には沢山のヒマラヤスギ巨木を見ることができます。 これは居留地に住んでいたイギリス人ブルック氏が、1878年にヒマラヤスギの種をインドから輸入し、苗木を育て、山手居留地一帯に植えたものです。おそらく、日本のヒマラヤスギとしては最も古いものではないかと思われます。 |
(130-3) こちらも謎多いコルクガシ古木 現在は元街小学校の敷地になっている一角に、下写真のようなコルクガシの古木が立っています。立っていると言うよりほとんど寝ているような状態ですが、枝葉は茂っており枯れているわけではありません。コルクガシは地中海地域原産の樹木ですが、この木の樹皮から良質なコルクが取れるためにその名があります。西洋の文物が日本に入ってくる過程で、日本でもコルクの生産が必要になり、このコルクガシは明治初期に試験的に植えられたものであろうと言われています。 |
日本自生種にアベマキ(棈、別名:コルククヌギ)というのがあり、これからもコルクが取れますが、品質はコルクガシに劣ると言われています。コルクガシ導入のため試験的に植えられたのでしょうが、元街小学校に残るこのコルクガシの状態から見て、日本の気候には適していなかったようです。国内でどこか他の場所で多数のコルクガシが栽培されているという話も聞きませんから、コルクガシ導入計画はどうやら失敗に終わったようです。 |
(130-4) 樹木を大切にする心 上記の他にもユウカリ、プラタナス、カナリーヤシなどの外来種が見られますが、それもさることながら、この地域を散策していてうれしくなるのは、日本自生種の大木・古木が、他の地域より豊富に見られることです。 |
樹木写真の属性 | |
樹 種 | アメリカデイゴ(ー)[マメ科デイコ属] ヒマラヤスギ(ー)[マツ科ヒマラスギ属] コルクカシ(コルク樫)[ブナ科コナラ属] タブノキ(椨の木)[クスノキ科タブノキ属] (「樹木の見所」のページにリンクしています) |
樹木の所在地 | 本文に記載 |
撮影年月 | 2017年5月、 2018年9月 |
投稿者 | 中村 靖 |
投稿者住所 | 横浜市都筑区中川中央 |
その他 |